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ロシアのピアニスト達 

5月もコンサートへ通いました。

ヴォロドスといえば、トルコ行進曲を超絶に編曲して弾いたり、観客が喜びそうな派手なプログラムで、とにかくタフで絶対潰れないアクロバットなピアニストというイメージ。その彼がブラームスの変奏曲や小品、シューベルトのソナタを弾くというので、エッセンへ聴きに行きました。
冒頭の「主題と変奏」はブラームスが自身の弦楽六重奏曲より第2楽章をピアノ用に編曲し、1860年9月13日クララの誕生日に送った作品。たっぷりの重音、エネルギッシュに掴みあげたアルペジオ、どこかベートーヴェンらしく味わい深い。大好きなOp.118は丁寧に磨かれて、うっとり。こんな落ち着いた面をも持つピアニストだったとは…。後半のシューベルトの遺作ソナタは最初から最後まで緻密に演奏設計がされ、豊かな色彩が素晴らしい。私の勝手なイメージは完全に覆される。そんな彼はまだ43歳。
アンコールまでハメを外さない、重厚なヴォロドスでした。


その翌週はデュッセルドルフにて、"噂のピアニスト"エレーナ・バシュキロワを。
何が噂なのかって、きっと色々な恋の噂が出た女性なのであろうという事。バレンボイムの(現在の)妻という風に見てしまうのは私だけではなく、後列にいたドイツ人の初老男性もそうでした。
前半のシューマンの小品とモーツァルトのファンタジーは綺麗でしっとりと、大人の女性らしい。後半のリスト「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」で突然集中力の糸が切れ、小鳥が喧嘩を始めてちょっとハラハラ。次も"お得意のスペインもの"のはずが乗り切れない。でも聴衆は大盛り上がりでアンコールは2曲、最後の曲は最後まで聴き(け)ませんでした…なんだか怖くて。
ところで彼女の父ドミトリー・バシュキロワはヴォロドスの師だそう。


翌日はまたエッセンにて、ロシアの巨匠プレトニョフを聴く機会に恵まれました。
彼は自身のために調整された Shigeru Kawai SK-EX と専属調律師と共にツアーを行う、こだわりのピアニスト。その専用ピアノで、このホール(Philharmonie Essen)では聴いたことのない特別柔らかな音、さらに低音は"遠くで鳴るお寺の鐘"のように間接的だが通った、驚きの音色を奏でていました。
印象深いのは非常に冷静な間の取り方と、独特なテクニック。ベートーヴェン・ソナタが絶対に狂ったように熱くならずに落ち着いており、繊細で個性的。彼の十八番である後半のスクリャービンは、聖域で限りなく抑えたピアニッシモを追及しているよう。生でのプレトニョフの演奏は初めてでしたが、動きが放牧馬のように穏やかで、音楽への姿勢、舞台での様子など全てが余裕に溢れており、不思議な雰囲気のするピアニストだと思いました。
彼はこの一ヶ月程前に母を亡くし、傷心のため日本ツアーをキャンセルしたそうです。
誰にも真似できないピアノを操る魔力、崇高な魂を持つ音楽家で、次は指揮者としての演奏も聴きたいです。


コンサート日時とプログラム♪
ARCADI VOLODOS アルカーディ・ヴォロドス
Mo. 11. Mai 2015 | 20:00 Uhr Alfried Krupp Saal, Philharmonie Essen
J.Brahms ブラームス: Thema und Variationen d-Moll 主題と変奏 op. 18b
Sechs Klavierstücke 六つの小品 op. 118
F.Schubert シューベルト:Sonate B-Dur 第21番ソナタ(遺作) op. posth. D 960
Zugaben アンコール
F.Schubert: Menuett メヌエット
A.Skrjabin スクリャービン: Caresse dansée op. 57/2 二つの小品より「舞い踊る愛撫」
D.Falla ファリャ: Danse espagnole スペイン舞曲
A.Vivaldi ヴィヴァルディ: Siciliano シチリアーノ
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ELENA BASHKIROVA エレーナ・バシュキロワ
Mo. 18. Mai 2015 | 20:00 Uhr Robert-Schumann-Saal, Museum Kunst Palast Düsseldorf
R.Schumann シューマン: Vier Nachtstücke 四つの夜曲 op. 23
W.A.Mozart モーツァルト: Fantasie 幻想曲 c-Moll KV 475
Sonate Nr. 14 ソナタ第14番 c-Moll KV 457
F.Liszt リスト: Ballade Nr. 2 h-Moll "Hero und Leander" バラード第2番「ヘーローとレアンドロス」
Franziskus-Legende Nr. 1 伝説より「1. 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」
I.Albéniz アルベニス: 5 Cantos de Espana スペインの歌 op. 232
アンコール
I.Albéniz :Tango タンゴ ニ短調
P.Tschaikowsky チャイコフスキー: Walzer ワルツ
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MIKHAIL PLETNEV ミハイル・プレトニョフ
Di. 19. Mai 2015 | 20:00 Uhr Alfried Krupp Saal, Philharmonie Essen
L.v.Beethoven ベートーヴェン: Sonate Nr. 10 G-Dur ピアノ・ソナタ第10番 op. 14/2
Sonate Nr. 17 d-Moll "Der Sturm" ピアノ・ソナタ第17番 「テンペスト」op. 31/2
A.Skrjabin スクリャービン: Préludes 24の前奏曲 op. 11
アンコール
F.Chopin ショパン: Nocturne Nr. 8 op. 27 夜想曲第8番

by pianokammer | 2015-05-31 04:50 | コンサート評